154金村佑華様ご依頼のSS(自由枠) 受注者龍鍋 ユウ

祭りで楽しいハッピーな中をジャンパーとかカイロとか熱冷ますシートとか色々重装備で鼻をずるずるしながらやってくる男がいた。隣にはその男を心配する二人の女性がいる。

「は、藩王様……お加減いかがでしょうか?」

 片割れの女性。芹沢琴は藩王である男の為に持ってきた浴衣を後ろに隠しつつも心配している。もう一人の女性金村は空を気にしつつも藩王に声をかけた。

「藩王大丈夫ですか?」

 金村佑華は小笠原で毎回空から落ちてくる少年と出会って恋を深めており、今回も空から降ってくるのかと空を気にしているのであった

ふと、金村佑華は他の今回の連れである青と舞を探した。なんといっても今回は芹沢の初小笠原である。なので存分に味わってほしかったのである。それはそれとしてズズっと鼻を鳴らしているFEG藩王である是空王は目がボーっとしている。

「風邪だ。頭が痛い」

 是空王は寒いのか体を震わせている。そんな藩王を見ていた金村は向こう側からやってくる二人のカップルを見つけた……瞬間、そのカップルは繋いでいた手を離し、こちらに手を振ってきた。青と舞である。

「あの、何かあったかい物買いに行きましょうか?」

 是空王に声を掛けていた芹沢は二人に気づき、お辞儀をした。
なんといっても小笠原は最初の挨拶が肝心だと考えたのか、またあまりの感激にお辞儀をしたのか、また別の理由があるのかは本人にしかわからないのである。

「(ショウ君また降ってくるのかな……)」

 金村は相変わらず空を気にしていたが、青と舞がやってきたのにも気づいていた。そして迎えるように二人の方へと向いた。

「すまん……スープ系たのむ」

 是空王は相変わらず寒さに震え、キョロキョロと何かを探し始めた。

「こんばんは、青、舞さん」

 金村が青と舞に挨拶をしている間に是空王は目を光らせると、ススっと近くにいる少年を自分のジャンパーの中に閉じ込めた。ジャンパーと是空王の間に少年は抱きこまれている。

「初めまして。来ていただいて大変嬉しいのですが。ウチの藩王様が風邪を引かれたようで……ちょっと買いに走ってきます」

 芹沢は青、舞に挨拶を行い、屋台に向おうとした時、目の端に是空王の姿が映った。そして是空王を見て止まった。

「て、藩王様!?」

 芹沢の前に映っているのは藩王と少年がジャンパーの中で抱き合っている姿である。芹沢の目がピキーンと光った。




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「なぁ、オレ風邪引いてるんだわ。お前で温めさせてくれよ」

「な、何言ってんだよ。こ、こんな人のいる場所で」

 芹沢の頭の中ではスイッチが入り、自然と勝手にセリフを作り、そして、どんな話を作ろうかと頭が猛回転し始めた。今から作れば冬の祭りに間に合うだろうか? いやいや、こんなシチュエーションの方がと頭の回転はドンドンと上がってきている。

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 金村はあれ? なんか今光った? っと思いつつも芹沢の方を見た。

「っては、藩王!?」

見ると藩王と少年が抱き……というか少年である小カトーに目が釘付けになった。

「離せ!」

 少年というか小カトーはジャンパーの中でバタバタ暴れている。

「さむー」

 しかし、是空のジャンバーガードはしっかり閉じられており、一向に脱出できないようである。

「スープならおでん買ってきたら?」

「ええ。そのつもりですけど」

 金村のおでん買ってきたらの言葉に答えつつも目を離せない金村であった。




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「いいじゃないか、減るもんじゃないだろ?」

「やめろーってそんなとこ触るなぁー!」

「んー、あったかいなぁ」

「や、やめろよ……」

さらに話が進行する芹沢脳内での会話。

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「はーなーせー!」

 ちなみに実際には小カトーがバタバタ暴れており、そんな様子はいっさいない。

「ははは。女にやればセクハラだが、男にやればBLなのだ」

 是空がそんな事を言っていたりもするが、決してそんな事はタブンナイのである。

「ショウ君!? 何故こんなことに!!」

 最初に正気に戻った金村は愛しの人を守る為に二人を引き剥がそうとした。ジャンパーの悪夢から小カトーを助けようと必死である。

「アララ。佑華さん。頑張って下さいましねー」

 状況的に同人のネタというよりはなんかギャグになってきたからか、芹沢は素に戻り、屋台の方へとおでんを買いに走った。

「いくら藩王でも怒りますよ!?」

 金村は小カトーの救出に成功すると藩王に怒りの声で訴えた後、小カトーの方を向いた。

「ショウ君大大丈夫?」

 是空は金村が油断した隙をついてジャンパーを広げると颯爽と小カトーをその中に奪い、そして再び抱きつくとそのまま金村から離れて行った。

「待たんかワレ~!!」

 金村は負けじと走り是空を追いかけた。おでんをたくさん買った芹沢がその横を通る。

「お待たせしました~。……あら、愛の逃避行?」

 これも同人ネタに使えるかなぁっと思いつつも今回のゲストをそのままにしとく訳にはいかないと芹沢は青と舞の方へと向かった。



 金村は愛ダッシュで小カトーを取り返した。荷物のように取り返される小カトー。そして取り返された是空はジャンパーにうずくまった。

「俺の暖房機ー」

「藩王!! あんまりお痛したら本気で怒りますよ!? ショウ君大丈夫?」

 金村は藩王にめいいっぱい怒った後、コロっと笑顔になって小カトーの方を向いた。

「俺、風邪うつったらどうしよう」

 小カトーはとっても大ショックな顔で呟いている。この場を芹沢が見ていたのならまたもや、脳内で物語が進行していたかもしれないが、青と舞の相手に集中していたので気づかなかった。

「あの、人数分買って来ましたけど。藩王様と小カトーさんと佑華さん行っちまいまして。おでんどうしましょう?」

 芹沢はお箸を青と舞に渡しながら言った。離れた所にいる金村と小カトーは何かそれどころでなかったようであるし、さらに離れたとこにいる藩王である是空も何か遠くを見てたようだが、すぐにジャンパーの中に顔を埋め、寒い寒いとうなっている。

「ありがとう」

「うむ」

 芹沢は青と舞にお箸を渡すと再び藩王の方へと話しかけた。
 
「藩王様ー、おでん買ってきましたよ~、あったまりますけどいらないのなら3人で食っちまいますわよー!!」

 金村は涙目の小カトーのオデコを触りつつ是空に言った。

「芹沢にでも抱き着いて下さい(無責任)大丈夫?」

 表情に怒りを出さずに芹沢はにっこりとしつつも言った。

「て、佑華さん。んな事言う方にはおでんあげませんわよ?」

 芹沢は金村に目でプレッシャーを与えつつも青と舞に話しかけた。

「はい、あ、おわんもいただいてきましたから」

 空のおわんを二人に差し出して、今度は本当の笑顔で言った。

「何とります?」

「ぼく、ひととおり全部」

 青も笑顔で答え、舞の方を向いた。

「はいはい~」

 青の言葉に芹沢はちくわにコンニャク、玉子と次々と食材をお椀に入れた。

「からしどうします?」

 お汁もたっぷりと入れる。

「練り物」

 舞の一言に芹沢はニコっと笑い、続けておわんに具材を入れた。

「はいはい~」

 ちくわとかはんぺん、おつゆもたっぷり入れ、美味しいおでんの準備管理。

「舞さん、からしどうします?」

 舞に気にしつつも藩王の方を見た。是空は男ーっとさまよっている。そんなに寒いのかどうかはわからないが、先ほどからのやりとりを見ていたのか、男は皆、是空から離れていっている。傍では金村が小カトーと話している。

「ふむ。からしはからいので、遠慮しておく」

「舞、かわいいなあ」

 舞の言動に青はニコニコと笑っている。舞は少し顔を赤げると青に文句を言っている。
実際に二人のやりとりを見て喜びつつも芹沢は答えた。

「あらあら、でも私もからいの苦手なのでわかります」

「青様は?」

 青は是空が何かものを落としたのをチラっと見た後答えた。

「ぼく、マスタードは大好きだよ」

「あ、ありますよー」

 芹沢は準備よく何故か持っていたのでマスタードをおわんに少し出しいれた。

「ふぅ、小笠原も冷え込みますのねー」

 芹沢は冷え込みに藩王が気になり声をかけた。

「藩王様ー、アンタ風邪引いてるんですから。あったかくしなきゃめーですわよー」

 是空は何か呟くと顔を上げた。その目は今までの風邪で苦しがっている顔ではなかったが、芹沢には気づかなかった。

「は、藩王様?」

 芹沢は藩王が少し気になり、2人に謝ると藩王の方へと駆け寄った。

「あの、風邪・・・・・・」

 藩王の方へと向かうとそろそろと背後に近寄った。

「……」

 是空は今までの風邪でフラフラな動きから一転すると芹沢の方へと向かう。そして急に近付き抱きついた。

「て、うぎゃぁぁぁぁぁぁ!!」

 芹沢はビックリして驚くと、もがもがと暴れた。持っていたおでんが豪快にバラ撒かれる。

「藩王様、アンタなんばしょっとね!? てかアンタ私は貴方の暖房じゃありません、つうか好みでもないし」

ちなみに芹沢は藩王のことを嫌っているわけではない。まぁ、あんたの彼女は原さんだろうっとかここで言っていいのかいいのか? とか色々説明できなかったのである。

「あ。そう。じゃ、あばよ」

 是空は空高く飛んだ。是空を追うように続けて爆発が起こる。

「うぎゃぁぁぁ!!」

 状況のわからない芹沢が叫ぶ。是空は着地と同時に芹沢を捨てると人のいないところに走って行った。

「イダダダダ、てかあの人、女性にこのような事する方でしたっけ?」

 近づいてきた青と舞に気づき、立ちあがりながら芹沢は言った。どうも藩王ではない偽物だったりしそうだと疑いを感じていた。

「敵だな」

「そうみたいだね」

 舞と青は是空が走って行った方を見ている。

「て、敵ですか?」

 芹沢は藩王が敵のロボットか何かだったのかとボーゼンとした。
 
「あれ、じゃあ本物は・・・・・・?」

「本物って、なに?」

 青はどうも芹沢が勘違いしている事に気づき説明する。

「僕にはあの人が、君を庇って飛んだように見えたけど」

 青の説明にボーゼンとする芹沢。

「………へ? てかさっきの爆発………あの人狙ってたんですか?」

「いや、てっきりあれ藩王様じゃないのかと思って」

 青の説明に芹沢は納得し、敵ならば追いかけないとと考えた。

「ともかく、藩王追いますわ」

「何がどうなってるか分かりませんけど、何かはできるハズですから」

 芹沢は今は猫妖精のアイドレスを着ているので夜目が聞くの……だが、確認してみても是空の姿は見えないというか姿がなかった。

「え~~~、藩王様~~~!!!! てか、風邪………」

 藩王にてACEの是空は世界移動能力を持っている……その事に思い当たり、もしかして……と芹沢は考えた。今回の小笠原は芹沢にとっての初小笠原である。出発前の国でもそんな話がよく出ていたので、藩王が気をきかせたのかもしれない……。

「えっと……。すみません、せっかくのお祭りが何か訳分からなくなってしまって」

 芹沢は青と舞に謝罪し、藩王に感謝した。

「私、この世界の人とこうして接するの初めてなのに。貴方達に会えなかったら私、今ここにいなかったから普通に色々お話したかっただけなのに」

 芹沢は今、このチャンスを作った藩王に感謝しつつも今日は小笠原を楽しむことにした。そもそも、追いかけて手伝う方法がないのならば今できる事はこれだけである。

「?」

「今こうしているのは、普通の話ではないのか?」

 舞の言葉に頷き、芹沢は答えた。

「あ、アハハ。確かに普通にお話していますわね」

 そして芹沢は持ってきた浴衣を二着取り出し青と舞のへと差し出した。

「これ、本当はこれみんなで着て屋台練り歩きたかったんですけどね。とりあえず、記念と言う事で受け取ってください」

「ありがとう」

 青と舞が受け取ると、芹沢は少し躊躇した後、二人の顔を見て言った。

「あの、質問いいですか?」

「我らに答えられることならば」

 舞は芹沢の目を見て答えた。ポニーテールの髪が揺れ、その姿に見とれつつも芹沢は聞きたかった事を口にした。

「ずばり、お2人の仲良しの秘訣って何でしょう?
 いや、すっごく信頼しあっているのが。そのお、羨ましいというか。こういう相手に会えたらいいなと思って、参考にと」

 そして、芹沢は口を閉じた。なにかドキドキ心臓がなっている。数秒もたたずに青が口を開いたがその間がとても長く感じられた。

「愛」

 青の言葉に舞のポニーテールが激しく動く、そして舞は青の顔にパンチをお見舞いした。

「まあ、単刀直入なお答え」

 芹沢は微笑んだ。パンチをあびた青はあびつつも続きを話した。

「どんなにどれだけ言われても、相手のためにしてあげること。さっきの人みたいに」

「それは佑華さん? それと藩王様? 小カトーさん?」

 今も少し離れた場所で話しをしている金村と小カトー、話に聞いた二人の経緯、そして先ほどの藩王の行動が芹沢の頭に横切った。青は微笑むと再び言葉を口にする。舞はフっと笑っている。

「僕は質問に答えただけだよ」

 青の言葉に芹沢はなんとなく青と舞の顔を交互に見た。なんだか信頼しあっているように感じた。

「あ、はい。ありがとうございました」

「あ、今からでも遅くないなら、屋台覘きに行きます?」

 芹沢はそう言うと、藩王さま大丈夫かなぁっと少し気にしつつも屋台を眺めた。そうすると横に舞がやってきた。

「あの男なら、生き延びるだろう。以前にも見たことがある」

「そうだね、いこうか」

 青はそういうと舞の手を握った。再び青にパンチが飛んでくる。

「はいな。金魚すくいしますー? 射的もよろしいですわねー」

 芹沢は舞のあの男発言に疑問を感じ、口にした。

「あ、藩王様とは。やっぱり色々ご縁があるのですかお2人は?」

 舞のパンチに芹沢は二人のラブっぷりを感じ顔をニコニコしながら答えた。

「ううん、縁はないな。遠く、みたことがあるくらい」

 青は思い出すように続けた。

「でも、少しは分かる。僕たちには話し掛けないようにしてたけど、好意は感じるから」

「ふぅん、でも、こういうの何か素敵ですわね」

 芹沢はラブっぷりな二人にもそう感じたが、「どんなにどれだけ言われても、相手のためにしてあげること」という言葉にも素敵さを感じた。
 それは色々な事を経験してきた青だからこそ言えることなのかもしれない。けれどそんな事を言えるような、実行できるような人が周りに多い。
 そう思いつつも、そういう事っていいよねっと思いつつも芹沢は青と舞とともに屋台を巡ったのであった。

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