SS自由枠(竜宮司様依頼) 受注 龍鍋 ユウ


 ユウタが元気よく立ち上がりそのままの勢いで窓から飛び出した!


 その場にいた竜宮は一瞬目を閉じて開けて、ユウタがその場にいない事実を把握し、思わず声を出していた。

「ユウタ君-----まってーーーーーー」

 その声と重なるように終礼の鐘がなる。ああ、もう授業も終わりだ……と思う間もなくひょこっとユウタが窓から顔を出した。

「なに?」

 窓に腕をかけて外から顔を出している姿はまるで元気小僧が放課後に友達を誘いに来たかのようにも見える……。



 ふと、竜宮はここって確か四階だったような? と思いつつもそんな疑問は眼鏡の奥に隠し通してにこやかに笑い、ユウタに話しかけた。


「よかったら一緒に帰ってもいい?」

「いいよ。じゃあいこう」

 竜宮の笑顔にニカっと反応するようにユウタが答えると竜宮もすぐさま返事を返した。

「すぐ行くから!」

 竜宮は返事を返すと慌てて帰り支度を始めた。なにせ、今終了のチャイムがなったばかりである。カバンに荷物を次々と入れていく。その間に、窓の所にいたユウタはピョーンと飛び降りて地竜の兄さんにしっかりと受け止められていた。

「うわぉ」

 竜宮は一瞬その姿に見惚れていたが、すぐさまカバンに本を詰め込み始めた。カバンにビシバシと詰め込んで慌てて教室を出、四階から一気に駆け下りる。


 今日はいつもと違うことが体験できるかもと期待しながら、竜宮が玄関から外に出るとユウタとユウタの兄が見えた。

「ごめん、お待たせ」

 竜宮はイの一番にユウタの兄の大きさに驚きつつもユウタに話しかけた。

「じゃあ、一緒に帰ろうか?」

 竜宮はかっこいいなーユウタのお兄さん……と地竜であるお兄さんを見上げた。長さは3mほどもあり、車輪もあるので見方によっては大きいバイクにも見えてとってもカッコイイ。

 ふと、竜宮は再び見惚れてたことに気づき、ユウタに声をかけた。

「ユウタ君はこのまま家にまっすぐ帰るの?」

「ううん。森の中を歩いてみるつもり」

 ユウタの言葉に好奇心が湧いた竜宮はちょっとだけ不安そうにユウタに問いかけた。

「ついてってもいいかな?足手まといになるかもしれないけど」

 足手まといという言葉に不安さが隠れでているが、ユウタは気にすることもなくあっさりとうなずいた。

「いいよ」

「ありがとう」

 竜宮の笑顔にユウタも笑顔で返すと、竜宮のカバンに気づき、兄さんの足の外装部分を開けた。中には小さいコクピットらしき空間がある。竜宮は再びかっこいいなぁっと呟いている。ユウタはその呟きを聞き、少し誇らしげになりつつも竜宮に話しかけた。
 
「ここに荷物、いれていこう」

「わかった、ありがとう。」

 竜宮はお兄さんの足に近付き、入れる前にお兄さんの顔を向いてお兄さんへと語りかけた。

「お兄さん、入れさせてもらいますね」

「いいよね。兄貴」

 ユウタは兄さんに了承を得て、竜宮は荷物を足に収納した。

「はい、かっこいいですね」

 竜宮はあらためてお兄さんを見て今日何度めかの言葉を口にした。けれど何度言われても嬉しいのか、ユウタは誇らしげに答えた。

「うん。兄貴は、いつも格好いい」

 二人はニッコリと微笑み合った。

「それじゃあ、行きましょうか」

 二人は自然と一緒に森の方へと歩み始めた。お兄さんの地竜も同じく車輪を回しするするとついてきたのだが、不思議な事に音をまったくたてることがなく、竜宮はまた新しい発見をしたのである。


「森にはお散歩しに行くの?」

「うん。メタルリーフでない森を、兄貴が見たいって」

「そうなんだ」

 三人はひっそりと茂っている森の中を歩いていく。メタルリーフというのはユウタの故郷である第六世界のドラゴンデパートのみに存在するプラスチックのような木についている金属の葉である。


「うん。緑色だね」

 なので、色も違うわけである。


「秋になると茶色とかになっていくけどね」

 竜宮の言葉にユウタは驚き、目を大きく開けた。

「そうなの?」

「植物は季節によって色々と変わるから」

「メタルリーフみたいだね」

 共通点を見つけて少し嬉しいのか、少しだけ笑うユウタ。それに答えるかのように説明をつづける竜宮。

「寒くなると葉が落ちて、春になるとまた芽吹く」

 竜宮はわかりやすいように、言葉を注意しつつも説明を続けた。

「メタルリーフも基本は植物と同じなのかな。ただ金属なだけで」

「うん。大きなシステム系は壊して作らないと、集積比率をよりあげられないからね」

「う、うん」

 竜宮はう、ちょっとわからなくなってきたかも、っと思いつつも思わずうなずいた。その後に自分でわかるように考えた。


(冬で壊して春で再構築と言うことかな? )


 竜宮が考えている間にもユウタの言葉は続く。

「日照時間が長いときに再構築するのではなくてシーズンオフでやるんだ」

 今度はわかった。竜宮は話を続けるかのようにユウタの言葉を引き継いだ。

「なるほど。なるべくエネルギーを最大限得られるようにだね」

「自然にあるものは無駄が殆ど無いようにできてるねぇ」

 ユウタは竜宮の顔を見てうなずいた。そして、二人はしばらく無言で森を眺めた。小笠原はまだ暑いからか、緑の葉が茂っている。森というよりも通学路でもある道にある木々は人によっては林といいそうであったが、ここにいる三人にとっては間違いなく森である。

「なるほど。たしかにこれは森だ。メタルリーフと同じ機能がある」

 ユウタは森を見つつもじっくりと観察している。目がキラキラしててかわいいなぁっと竜宮は思いつつも植物の説明をする。

「植物は食べれたりするけどね」

 後ろを見るとお兄さんは文字通りライトをつけながら森を見ており、かっこいいなぁっと思いつつも竜宮はふと疑問を口にした。

「メタルリーフの落ち葉とかってどうなるの?腐らないだろうし」

「蟲が食べるよ」

 ユウタの言葉に好奇心を刺激された竜宮は次の疑問を口にした。

「その蟲も金属で構成されてるの?」

「うん」

 即答した後、少し考え、ユウタは補足の言葉を追加した。

「金属でない部品もあるけどね」

「本当にこっちと変わらないな。こっちの森も同じ。蟲の構成物質が違うだけだ」

 竜宮の言葉にユウタは「うん」っとうなずき、そしてあらためて森を見つめ、呟いた。

「ここにも光のネットワークがあって、ドラゴンデパートがあるんだろうね・・・」

 竜宮は慌てるかのように答えた。


「いやいやいやいや」

「それは無いな」

「植物は基本スタンドアローンだよ。共生関係に当たる植物や蟲がいることはあるけどそれもごく一部だし」

 ユウタは足を止め、目をつぶり、瞑想でもするかのように急に静かになった。




「?どうしたの?」

 後方ではユウタの兄さんもライトを消し、車輪を止め、静かに動きを止める。



 沈黙を保つユウタに竜宮は心配になり、もしかして変な事を言ってしまったかと心配になった。

「ユウタくん?大丈夫?」

「気に障ったこといったのならごめんね」



 ユウタは静かに目を開けると、竜宮の方を向き、答えた。

「僕には、見えるけどな。弱いけど、広大な広がりを」

 ユウタはあらためて森を見て、言葉を続けた。

「メカニカルノイズと違う」

 竜宮はユウタの言葉に好奇心とは違う不思議なモノを感じた。今まで知らなかったモノがそこにあったかのように。



「私には、分からないな。だけど私に感じられないだけなのかも」

 竜宮も森を見て、言葉を続けた。

「ユウタ君には感じられるのかも」

 後方でユウタの兄のライトがつき、シャットダウンしていた兄が再起動し始めた。竜宮はライトに気づき、なんとなく状況を理解し、兄に向って挨拶をした。

「おはようございます」

 そして、再び森を見て、今まで見えなかったものが見えないかなっと目を凝らしつつも先ほどの続きを話した。

「生物も電気信号で動いているから根のほうで繋がっているのかな・・・・」

 ユウタが舌打ちをすると、兄のセンサー横にある小さなライトが、チカチカ点灯し始めた。

「んーとこれは大丈夫なの?」

 心配になった竜宮の言葉を横にユウタは再び、今度は違う舌打ちを行った。すると兄のライトの色が青色になった。そして兄の車輪が動いた。そして、あらためてユウタは竜宮の方へと向いた。

「なにが?」

「点滅してたから。けどなんでもなかったみたいだね」

 竜宮は少し安心すると、パソコンについてるランプと同じようなものなのかなっと身近なモノで考えてみた。

「データリンクしてたんだ」

「何とリンクしていたか聞いてもいい?」

 竜宮の言葉に少しだけユウタは返事を迷ったが、すぐに竜宮の目を見て答えてくれた

「僕……俺には、電子接続端子がないから」

「うん・・」

 竜宮は同じくユウタの目を見てうなずいた。

「兄貴は光のネットワークを同じ有機体なら見つけられると推定して僕に託して、自分はメカニカルノイズを消すためにシャットダウンした」

「僕は光のネットワークを索敵して、そしてその話を兄貴に入力した」

「それだけ」

 竜宮は一つ一つの話を聞き、うんっと一つ頷くとユウタに答えた。

「だからシャットダウンしていたんだね。通じ合ってるなぁ。説明してくれてありがとう」

 竜宮は人と機械の在り方、兄弟として通じ合ってる二人に納得し、また今日という日に巡りあえたことにひそかに感謝した。



 そして、以前から疑問に思っていた事を口にした。


「聞きそびれてたんだけどドラゴンデパートってどんなものなの?」

「ドラゴンの兄弟を集めた有機体の学校」

 ドラゴンデパートを想像し、想像しきれないなぁっと竜宮は思った。

「こっちにはドラゴンがいないからなぁ・・・」

 竜宮の言葉にユウタは頭を振って、続けて竜宮へと話しかけた。

「ドラゴンのいない生態系はない。森があるんだ。竜も、かならずいるよ」

 今まで音をたてなかったユウタの兄がエンジンをかけた。それは竜宮にも「そうですよ」っと言っているように聞こえる。


「そうだね。私が知らないだけなんだろうね。これからは気をつけて周りを観察してみるよ」

 竜宮が今日は随分色々な事を知ったなぁっと笑いを浮かべつつ答えるとユウタも同じく笑ってうなずいた。

「うん。それがいい。竜がなくても人は生きていけるという人もいるけど、それはきっと間違いだよ」

「そうだね。竜が居た方が楽しいだろうしね。」

 竜宮はユウタクンが国にやってきてくれてよかったなぁっと思い、また他の竜もいるともっと楽しいのかもよ考えなんだか楽しくなってきた。


「うん」

 気持ちがわかったのかどうかはわからないがユウタはうなづくと兄の方へと顔を向けた。

「さ。死の森から帰ろう。兄貴」

「ここは湿っていて、暖かいけど、どこか冷たい」

 そんな感想を聞いて、竜宮は誰に話すともなく呟いた。

「メタルリーフの世界に住んでいるからね。それが普通かも」

 そして続いて言葉を紡ぐ。

「私は好きなんだけどね。蟲は苦手だけど」

 ユウタは竜宮の方へ顔を向けた。

「いこう」

「うん」

 ユウタが指す町へと。

「じゃあ、帰ろうか」

 竜宮の言葉とともに三人は町の方へと歩き始めた。それは全然違うようで違わない三人である。ひょんな機会から出会った三人はこれからもいくどか出会い、友情を深めていくのだが、それはまだ誰も知らない別の話である。

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