秘宝館 駒地真子様依頼SS 銀内 ユウ@鍋の国


「いらっしゃいませー」

 ジュージュと香ばしいカリブーのお肉、カリブーチーズやヨーグルトも各種用意。
お酒にももちろんですが、ジャガイモやパン、ご飯ともとても合います。ぜひご賞味ください!




「フン、この味だけは評価してやってもいいかもな」

 大介はそう言うと、ミルクティーを一口飲んで、一息ついた。目の前を見ると姉が懸命に肉を焼いている。

「……」

 それにしてもこの国に来てから随分と食生活が変わったな、と大介はあらためて姉の姿を見て思った。以前まで居た場所と違い、肉や野菜などが豊富であり、なおかつ、食べ飽きていたジャガイモに関しても様々な調理法が存在しており、ジャガイモに対する認識を変えるまでになった。

 そもそも、あの肉ジャガとかジャガイモサラダとかは卑怯である。ジャガイモ単品の味と違い、野菜や肉と一緒に作り出すハーモニーは以前までに認識していた肉ジャガやジャガイモサラダとは別物であった。これが本当の味かと再認識させられたものだ。滝川に連れられていった味のれんのコロッケの時以上の味のカルチャーショックを受けたのであった。

 ミルクティーを再び飲むと、今度はミルクティーへと意識を向けた。そう、このミルクティーも邪道である。そもそも大介は紅茶にミルクを入れるといった子供のような好みはなかった。(多分)
しかし、この国でたまたま飲んだミルクティーはとっても濃厚であり、農耕な国だから出せる味なのかもしれないが、紅茶に砂糖を入れて飲むのとはまた違った味わい深さがあった。(砂糖入れるのはその時の気分次第なんじゃないかな?)

「はぁ、美味しすぎる」

 姉のそんな言葉に目を向けると、いつのまにか焼いていた肉はなくなっており、新たな肉を投下している様であった。

「姉さん、僕の肉はどこにやった?」

「え? 別にいいじゃない、また頼めばいいんだし」

 今日の晩御飯は焼肉食べ放題のコースであった。もちろんオプションも食べ放題のコースを選んでおり、時間制限はあるとはいえ、まだ時間はあるし、また注文すればいいだけのハズではあるが……。

「姉さん、僕が頼んだ肉は確か、少し辛めのモノだったハズだけど?」

「……そうだっけ?」

 姉さんは、あまり辛いモノは得意じゃない。(ガンパレードマーチ攻略本調べ)
けれどこの国の味はそんな事を気にさせない程に姉さんを虜にしているのか……と大介はミルクティーを口につけ、香りを味わった。

それにしてもよく食べるな、姉さんは……なんとなく姉の顔を見つめる大介。こころなしか、身体に張りができているような気がする……。

「どうしたの、大介食べないの?」

「な、なんでもない!」

 唐突にこちらを振り向いた姉。なんとなく心を見通されたかのように感じた大介は自分でも気づかないうちに声を荒げていた。

「だいたい、姉さん、食べ放題だからって食べすぎじゃないかい? そんな事だと、一年後にはビア樽だよ」

「な、なったらこと!」

 自然と口論になりつつあった二人はそこで人の視線に気づいた。あまりにも大声だったのか、まわりがジロジロとこちらを見ていたのだ。

「フ、フン! ともかく、ほどほどにしておくんだね。先に戻ってる……」

 大介は気恥ずかしくなったのか、席を立った。なにせ、この国の人間は勝手に歓迎会をしたり、足にさわろうとしたり、勝手に恋をしているだとかいってお節介をしにくる者ばかりである。もしこんな言い合いをしている所を知り合いに見られたら次の日にはどんなお節介が飛んでくるかわからない。こういう事は家ですべきである。


 店から出て行った大介をしばし、眺めていた森はしばらくするとジューっとなっている肉に気づき、慌ててお皿の中のタレへと漬け込んだ。

「大介のバカ……」

 森はそう言うと、一人だとなんとなく寂しいし、帰ろうかなぁ……と思った。しかし、すぐに出て行くと大介が店の前でそれ見た事かといった顔で待ってそうなのでやめた。

第一、食べ放題の時間はまだ残っているし、なによりも注文しておいて食べないで帰るのはカリブーさんに申し訳ないのである。

「あ、店員さん、イノチチブタの三点セットください」


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「う、うーん」

 姉のうなき声に大介は溜息をついた。

「まったく、姉さんは自制心が無さ過ぎる」

 家に帰った森への最初の言葉がそれであった。

「う、だって、残すのはもったいなかったんだもん……」

 森はそう言うと、ソファーに寝そべった。食べすぎで動くのがつらすぎる。

「フン、だからいったろ? 食べすぎだって……。だいたい、食べ放題だからといって何でもかんでも食べるのもよくないね。ちゃんと自分のペースで……姉さん?」

 大介の小言がうるさくなった森は動くのがつらいのは承知の上で無理やり動き、自分の部屋へと戻っていった。

「……姉さん、ふ、フン、まったくだらしない姉を持った身にでもなってほしいな」

 森が自分の部屋のドアをしめたのを見届けた大介は文句を言いながら先ほど手に持った胃薬を薬箱へと戻した。

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 お昼に近づくにつれて、駒地はウキウキ気分を抑え付けられなくなっていた。なにせお昼ごはんである。
 
 森はいつもお弁当を作って持ってきている。この前サンドイッチを犬(?)に投げた時にわけてもらったお弁当は美味であった。

 そぼろご飯に唐揚げ。明太子と辛子レンコンと色も良く、仲良く分けて食べたものである。

それに今日はなによりもお弁当のおかずの取替えっこがしたい。


「おかず、交換しませんか?」
「…え? いいけど。」

 などと会話をしながら一緒にお昼を楽しむ……そんな事を思いながら駒地は森の席へと近づいた。

 森は席に座り……というか、机にぶっ倒れていた。目もなんとなくうつろに見えるような気もする。

 駒地は慌てて森の席へと駆け寄った。

「どうしたの?」

 もしかして風邪とか、急にしんどくなったとか? と少しだけ心配しつつも顔をのぞく駒地。

「……きかないでください」

 なんとなくうつろな目で返事をする森。けれど、声はいつもの通りであり、とくに鼻声でもない。

「んー、そう?じゃあ、何があったかは聞かないけど、話したくなったら言ってくれていいからね?」

 どうも、緊急っぽいカンジでもないので、駒地は少し落ち着いた。そして、言いたくなったら言ってねとやさしく声をかける。

「……」

 森はそんな駒地の気持ちがわかったのか、心配しているという事が声色でわかったからか、うっすらと顔を赤らめた。
なにせ、今度の事は別にそういった類の心配をされるような事ではないのだ。

「とりあえず、お昼食べないと元気でないよ。」

 駒地の言葉にうっと言葉につまると、森は白状するかのように小声で答えた。

「食べ過ぎました……」

 駒地はなるほど、と理解しつつ、風邪とか体調を崩しているわけではないという事に安心し、そしてほんのちょっぴり、そう、ほんのちょっぴりだけお弁当交換ができなかった
なぁという思いが心をよぎった。……でも、ここまでになるほど食べ過ぎたの? と少し気になった。


「朝ごはんかな?」

「実は、動くのもつらく……」

 森はそこまで言うと、観念したのか、状況を説明する事にした。

「昨日の晩御飯が、食べ放題の焼肉で・・・」

 焼肉! なんか美味しそう……確か、今カリブーフェアやっているんだよねぇと思いつつも神妙に答える駒地。

「うん、食べ過ぎると確かにおなかもたれるよね」

「じゃあ、お昼はゆっくりしようか。」

 駒地の言葉に、森はうなずいた。

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 森の目の前には駒地が座っている。お腹が張って苦しいけれど、こうして心配して一緒にいてくれる友達がいるという事に少し嬉しく思いつつも、申し訳ない気持ちが一杯になる。

「おなか楽になったら、カロリー消費に散歩でもしよっか?」

 駒地の気持ちに申し訳なくなる。わざわざ食事をしないで一緒にいてくれるだけでなく、一緒に運動のお誘い。

「はい・・・すみません。太りました」

「若いんだから、すぐ取り戻せるよー。」

 駒地の励ましの言葉にあんなに食べなければ良かったなぁ……と記憶のフラッシュバックの洪水に飲まれる森。

昨日はお肉だけでも、シカブーのハラミにイノチチブタ。

シカブーだけでもルイベ風のベリー添えやシカブーチーズとトマトサラダ。

アップルジュースにジャガイモバター。

デザートにはブルーベリージャムヨーグルト……。


「……おいしかったんです」

 自然と昨日食べた食べ物の事を思い出していると言葉が出た。食べすぎて動けないのにうちは何を言っているのだろうかと森は顔を赤らめた。

駒地さんは呆れていないだろうか? 森は駒地の表情を伺うかのように顔をあげた。

「うん、美味しいものは美味しいよね。時々なら大丈夫だよ」

 駒地の言葉にホっと溜息をつく森。そして先ほどまでは顔を下に向けていたので気づいていなかったが、思いのほか、自分達が周りの注目を浴びている事に気づいた。

 よく考えれば、クラスメイトがぶっ倒れていて、誰かが様子を見に行けば気になるのは当たり前であった。

「いつも美味しいものばかり食べてると危ないけど、時々ならセーブできるし、美味しいものもより美味しく感じられていいんじゃないかな」

 駒地の続けての言葉にこう、心配して言ってくれているのはわかるけど、その、他の人が聞いているという事に森はいたたまれなくなった。

「いや、もうなんというか」

 森の言葉に駒地は? と顔を向ける。

「やっていいですか?」

「なにを?」

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 教室の前の方で太ったとか、美味しいものどうのこうのといった声が聞こえた時、他人事には思えなくて、なんとなく私は耳をすましていた。

なにせ、今は食欲の秋の季節である。柿に柿のアイスクリームに柿のフルーツケーキ、柿ジャムに柿入りちらし寿司、柿の包み揚げ、まさに柿三昧な季節である。

 しばらくすると、クラスメイトの駒地さんの言葉が聞こえてきた。

「いつも美味しいものばかり食べてると危ないけど、時々ならセーブできるし、美味しいものもより美味しく感じられていいんじゃないかな」

 うん、その通り。

「いつも美味しい柿だけど、いつも食べてると危ないよね。ちゃんとセーブしないと、本当に美味しい季節に食べるからこそ美味しく感じられていいんじゃないか」

 脳内変換はバッチリで私は柿の事を思う。ああー。なんで秋って一瞬で過ぎていくんだろうか……どっかに一年中秋だらけで柿食べ放題な場所ってないかなぁ

「おーい、大丈夫かぁー」

 そんな私の目の前で手をパタパタと振る男の子がいた。む、そんなに手を振らなくても気づいてるってば。雅史君は相変わらずいじわるだ。

「雅史君、気づいてるから目の前で手振るのやめてくれる?」

「おー、そうかそうか」

 ニカニカと笑う雅史君。なんだかなぁーとジト目で雅史君を見る私。


「今の時期、ご飯美味しいから。つい、自分に言い聞かせるようになっちゃった・・・」

(今の時期、柿が美味しいから。つい、自分に言い聞かせるようになっちゃった・・・)


 横から聞こえてきた声を脳内変換しつつも声の方を見た。そこには駒地さんと森さんが抱き合っている。私にそういう趣味はないが、気持ちはわかる。

「秋はだめです、だめ。何でもおいしい」

 森さんの言葉に同意する私、特に柿はダメだ。デリシャスで美味しくてうまくてもう、一生柿だけ食べていたいぐらいである。ご飯の後のデザートで食べるのもよし、
おやつに食べるのもよし。手をまだ振っている雅史君を無視して食べても美味しい。特に秋は太りやすいから大変である。特に毎年の事とはいえね。


 柿ードリームゥ~。柿だらけの天国。柿で柿。

「おーい」

 柿のフルコースってどこかのお店でやってないかなぁ。あったら、宰相府藩国脱藩してもその国に行くのになぁ……。

「おーい、さすがに戻ってこーい」

 雅史君の言葉を気にしない私。


「でも、全然食べないと、夜おなか空いて倒れたりしないかちょっと心配だよ。果物ならあるけど、ちょっと食べる?」

「いいです。食べると食べ過ぎるんです。自制心ないから」

 駒地さんと森さんの言葉が聞こえる。でも、ダメ。果物もとい柿は食べないと生きていけないよ?

「おーい、戻ってこないと柿やらないぞぉー」

 はっ! 雅史君の懸命な説得に正気に戻った私は雅史君の手元を見た。雅史君の手には柿が入ったタッパがあった。私の分はもう食べてしまったのでおそらく、雅史君のものであろう。しかし……。

「雅史君、小笠原で柿は微妙だよ?」

 そうなのである。小笠原は暑い、例え11月でもまだ柿を食べるには微妙に……というか、何故、私は小笠原にいるのだろうか……確か、雅史君に言われたんだっけか……。そのうちシーズンオフになるからその前に一回小笠原に行ってみようぜと。

そもそも、雅史君は旅行がわりと好きなのか、こういったレジャー情報はいち早く見つけてくるのである。そのうち、柿だらけなレジャースポットでも見つけてくれないかなぁ……。

「・・・・・・それなら。頑張ってダイエットでもしてみようか。一緒に」

「同志……」

 駒地さんと森さんの言葉が聞こえてくる。うん、互いに柿を食べ過ぎた……じゃない、あっちは焼肉だっけ……柿の専用ソースでもあったらお肉美味しいかもなぁ。ほら、りんごのソースはあるわけだし……。



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 駒地は森とのダイエット大作戦の為にあらゆる資料を集めた。特に森さんの知識は99年である。ならば、それ以外も含めて色々なダイエットで向いているのを探せばいい。そんな思いで放課後の図書館に森と一緒にやってきたのであった。

 うん、リンゴダイエットってのがあるのか……。

「森さん、このダイ……」

 駒地が振り返ると、そこにはジっと本を見る森の姿があった。なんの本を見ているのかそっと覗いてみると、そこには名画図鑑と書いてある。

なんとなく、駒地は話かけるのをやめると、ジっと森の姿を見つめた。あの目は写生会の時と同じ目である。心底、絵を描くのが好きなんだなぁと思いつつも、駒地はダイエットの本を片付けて、そっと観光ガイドを探した。

「んーっと」

 絵を書くにはやっぱり、風景とか……さっきの森さんを見ると名画とかでもいいよね。そんな風に思い、駒地は観光関係の本を探す為に本棚へと向かった。

目当ての観光ガイドの棚には先客がいた。本の中身を見るのではなく、棚にある番号を指でさしつつ、何かを探しているようである。

「ん、あ、こんにちわ」


「こ、こんにちわ」

 相手から話し掛けてきたので、慌てて駒地も挨拶をかわした。まさか小笠原の学校で他の人と会話するとは思っていなかったのである。

「えーっと、確か、ダイエットの話してた人?」

 相手の言葉に、どうも同じクラスにいた人だと気づく駒地。

「あ、俺、雅史って言います」

「あ、はい、駒地と言います」

 なんとなくお見合い状態な二人。

「なにか探しているんですか?」

 雅史は左腕に着けている腕章を見せた。そこには図書委員と書いてある。この人物。小笠原にリゾートで遊びに来ているのに図書委員もしているのであった。

「あ、はい、えっと風景とか美術館とか、そういった観光名所を探していまして」

 雅史はニヤリと笑うと、少し声を抑えて言った。

「探してるのは、やっぱり森のお嬢さんの為かな?」

 図星をつかれた駒地は私ってそんなにわかりやすい性格しているかなぁっと思いつつも、頷いた。

「ふーん、それなら……」

 雅史はそう言うと、本棚から一冊の本を取り出して、パラパラとめくった。

「絵を描くのに向いている美術館があるよ。電子化されているから多分、希望に沿う物件だと思うよ、どうぞ?」

 ニカっと笑う雅史。受け取った観光ガイドには「観光っ子シリーズ第五弾 観光マップ」と書いてある。ページには世界最大規模の美術館へ行って見ませんか? のキャッチフレーズ……。

「俺も言った事あるけど、そこはマジおすすめだよ。まぁ柿好きな女の子の場合、すぐ飽きたけどネ」

 雅史はそこでニガ笑いすると、手をヒラヒラさせながら別の本棚へと向かっていった。

図書委員としてお客さんの邪魔はしない……という事であったが、そんな事は露知らずの駒地は一つ礼をすると、美術館のチケットの前売り券の販売場所をチェック。そして森のいる方へと戻っていった。

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